GUNS, GERMS, AND STEEL The Fates of Human Societies by Jared Diamond
- 本書は1998年に一般ノンフィクション部門でピューリッツァー賞を受賞
- 各国で翻訳されて全世界的なベストセラーとなった歴史書
- 朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位と日本でも話題になった本(日本語訳発売は2000年)
- 人類間に格差のなかった一万三千年前に遡り、そこからなぜ現代社会の不均衡が生み出されていくに至ったかを考察しています
- 民族によって歴史が異なる経路をたどったのは、生物学的差異ではなく、人々の置かれた環境的差異によるものであるという仮説を、著者は様々な分野からの知見を統合して展開していきます
- 歴史書ってつまらないのでは?というように思っている方がいたら、この本は違います!
「銃・病原菌・鉄」の著者
ジャレド・ダイアモンド
「銃・病原菌・鉄」のページ数
「銃・病原菌・鉄」の発売日
「銃・病原菌・鉄」の英語学習レベル(読みやすさ)
英語のレベル 上級
英語レベルは、上級です。
やはり本の内容として、学術的な単語、難しい単語が出てくるのは避けられませんし、ペーパーバックで656ページと長めなので、ちょっと気合が要るかもしれません。
ですが、とても知的好奇心をそそられる内容で、面白いです!
洋書上級者で、内容にもかなり興味があるという方にはぜひ挑戦していただきたいです。
上級者ではないが、ぜひ挑戦したいという方は、日本語版と併用するというのはひとつの手です。洋書の攻め方のひとつとして、日本語で読んでみてから英語に挑戦というやり方ですね。
挑戦するなら電子書籍で!
挑戦する場合には、電子書籍で読むことをおすすめします。
なぜかというと電子書籍の方が、圧倒的に辞書が引きやすいからです。
紙の本で読むのは相当大変なことになると思います。
例えば、語彙数が8千語から一万語ぐらいはあって、洋書を読み慣れている方であれば、電子書籍で辞書を引きながら読むのは十分可能だと思います。
「銃・病原菌・鉄」はどういう人向きの洋書?
人類の歴史を、ちょっと違った角度から見てみたい人におすすめです。
例えば感染症がいかに大きな影響を与えたのかといったことや、大陸の形に着目した展開など、ちょっと教科書に載っている歴史とは異なる見方が興味深いですよ。
英語的には上級ですが、興味をそそられる内容だと思います。
「銃・病原菌・鉄」へのコメント
著者自身も『過去一万三〇〇〇年の歴史を、これらの章ですべて説明できるなどという幻想は抱いていない。たとえ、答えがわかっていたとしても、それを一冊の本で表すのは不可能である』と述べており、かなり壮大なテーマを扱った本です。
「銃・病原菌・鉄」という題名ですが、これはヨーロッパ人がアメリカの先住民を征服できた直接の要因を端的に表したものです。
第一部の第3章「スペイン人とインカ帝国の激突」で詳細が述べられています。
スペイン人がインカ帝国を滅せた直接要因は、
・銃器と鉄製の武器
・馬を使った軍事力
・インカの人々にはヨーロッパから持ち込まれた伝染病に対する免疫がなかったこと
・航海技術
・中央集権的政治機構
・文字の読み書きによる情報伝達
などであることが解説されています。
スペイン人ピサロたち一行がペルーに上陸したのが1527年ですが、ではなぜこの時点ですでにヨーロッパとその他の大陸の間にこれらの差異が存在していたのか、なぜ逆のことは起こらなかったのか。
第二部以降で、こうした疑問に対する究極の要因が探られます。
ここから先は、歴史学だけではなく、遺伝学、分子生物学、生物地理学、行動生態学、疫学、言語学、文化人類学など多彩な分野の知見を駆使して究極の要因の解明が進められます。
一人の著者が、これだけの広範囲に亘る分野を跨って書き記したことに敬意を感じますし、物凄い知的スタミナがないと書ききれないのではないかと思います。
食糧生産、家畜、それがどのように大陸を伝播していったのか、文字や感染症とどのように関わっているのか、各大陸が東西南北にどのように広がった陸塊であったかということとの関係など、なるほどという話がいっぱい出てきます。
また、動物由来の感染症、病原菌が、歴史の中で大きな役割を果たしたことは明らかなようです。
特にヨーロッパ人による新大陸征服は、銃器よりも病原菌が果たした役割が大きいようです。
なんとヨーロッパ人が家畜とともに持ち込んだ天然痘などの感染症により、南北アメリカ大陸の先住民族の95%が葬り去られてしまったとのこと。
インカ帝国やアステカ帝国は、ヨーロッパ人の軍事力というより、病原菌で滅んだと言った方が正しそうです。
病原菌恐るべし…。
現代世界の不均衡を生み出したものは何なのか。
その問いに対して、著者は、ものすごく大雑把に言えば、大陸ごとに環境が異なっていたからだという仮説を立てて、様々な角度から検証していきます。
一方で、第四部では、オーストラリアや中国などのように独自の歴史をたどった地域もあることや、解明されていない謎がまだまだあることも認めています。
いずれにせよ、本書でジャレド・ダイアモンド教授が示してくれた歴史の謎解きは、大層興味深く、そして大胆なものです。
ちょっと英語は難関ですが、上級者の方は歴史の謎解きに挑まれてはいかがでしょうか。