Sapiens: A Brief History of Humankind
- 世界48カ国で翻訳されたユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー。
人類が初めて姿を現したのは、およそ250万年前。そして10万年前の地球には、少なくとも6つの異なるヒトの種が暮らしていた。しかし、1万年前にはホモ・サピエンスが唯一の生き残った人類種となっていた。
なぜサピエンスだけが成功したのか?
サピエンスは生物学的に進化したわけではない。サピエンスは「虚構」を作り出す能力を得たことによって、他の人類種を絶滅に追い込み、世界を征服することができたのだ。
サピエンスは、自分で生み出した「虚構」を共有することにより、他の動物には不可能な規模の協働を可能とし、食物連鎖の頂点へと一気に登り詰めた。この「虚構」を発明する能力を得たことが、「認知革命」である。
そしてサピエンスは、その後の「農業革命」「科学革命」へと進んでいく。 - ユヴァル・ノア・ハラリは1976年生まれのイスラエルの歴史学者。本書は、元々は2011年にヘブライ語で出版され、本国でベストセラーとなっています。
- 2015年にフェイスブックのマーク・ザッカーバーグが本書を紹介したことにより、世界的ベストセラーとなりました。
「サピエンス全史」の著者
ユヴァル・ノア・ハラリ
「サピエンス全史」のページ数
「サピエンス全史」の発売日
「サピエンス全史」の読みやすさ
英語学習のレベル 中級
英語レベルは、中級といって良いかと思います。
ちょっとページ数が多めなので、読破するのにやや時間がかかるかもしれません。ですが、個々の話題が興味深いものが多いので、ページ数の割には苦にはならないのではないでしょうか。
語彙/単語的には、生物学、歴史学などの専門用語は辞書が必要だと思います。ですので、電子書籍での読書を強くおすすめします。できる限り辞書を引かないことをおすすめしますが、どうしても調べたい時に、電子書籍は格段に楽ですから。
「サピエンス全史」はどういう人向きの洋書?
普段、歴史なんて興味ないよという方にこそ、おすすめしたい本です。
歴史って、実はこんなに面白いものなんだと認識を新たにさせられます。
ユヴァル・ノア・ハラリの他の2冊のベストセラー『ホモ・デウス』『21レッスン』の出発点となるのが本書。なので、通して読むと著者の主張がよく理解できます。
どれから読んでも大丈夫ですが、じっくり考えてみたい人には、本書から始めるのがおすすめ。
「サピエンス全史」へのコメント
ユヴァル・ノア・ハラリは歴史学のポップスター
著者は歴史学の教授なわけですが、その著作はどれも歴史学の枠には収まらない広がりを持った内容となっています。著者の最初の世界的ベストセラーである本書も同じです。
そして、その語り口はユーモアに溢れ、とてもポップな感覚を持っています。知的かつ論理的であることはもちろんですが、茶目っ気を出せる機会があれば、必ず出してしまうというか。
マーク・ザッカーバーグにより一躍有名になった辺りもそうですし、ちょっと退屈そうな歴史学を、とてつもないエンターテイメントに仕立ててしまう著者を、僕は(良い意味で)ポップスターっぽいなと思っています。
切り口の斬新さが、読む者を退屈させない
もしかすると、記載されている事実自体は、ものすごく新しいという訳ではないかもしれません。
例えば、サピエンスが世界を征服できたのは言語を持ったおかげというのは、目新しい事実ではありません。しかしながら、そこから「虚構」や「噂話」、「プジョー伝説」といった話の発展のさせ方をするのは、著者ならでは。
思わず、「うーん、なるほど」となるのです。単純に面白い。
同じ事実であったとしても、退屈に語るか、面白く語るかは決定的に大きな違いです。著者の最大の強みは、この様々な事実を面白く語れるところではないでしょうか。
人類は「農業革命」で実は豊さを失った?
本書は、人類史上の3つの革命、すなわち「認知革命」「農業革命」「科学革命」を軸に展開されていきます。
一般的には、人類は「農業革命」によって、惨めな狩猟採集民の生活から、豊かな農耕社会へと移行したと理解されているように思いますが、著者によればそうではないようです。
種全体から見た進歩であったり、社会や技術の進歩が、必ずしも個々人の幸福とはイコールではないということ。言われてみれば、近代社会でも多くのことがそのようになっていますが、それは古代の社会でもそうだったようです。
つまり、我々人類は「虚構」を使い革命を起こし、食物連鎖の頂点に立ちながら、あまり幸福ではないというおかしな状況を何万年も続けているということ。うーん、なんだかなぁ。
そして「科学革命」の先に待つものは?
小学生の頃、恐竜大図鑑で見たサーベルタイガーのあまりのカッコよさに、どうしてこんな動物が絶滅してしまったんだろうと残念に思ったものでしたが、まさか自分たちサピエンスが原因だったとは、その時には思ってもみませんでした。
そのようにサピエンスは太古の昔から他の動植物を絶滅させ、自分達だけを増やし続けてきた訳です。しかし、ここに来て、生物工学、サイボーグ工学、非有機的生命工学といった「科学革命」が状況を変えるかもしれません。
加速度的に進歩している「科学革命」ですが、行き着く先はどこになるのか。サピエンスは、自らを作り変え、その歴史に幕を下ろすことになるのでしょうか。
実は現代人も太古の人類も大差はない?
「農業革命」が進んだのは長い時間をかけてのことで、その過程では、個々の人には革命が進行中だという認識はまったくありませんでした。「農業革命」の結果、個人レベルの生活は大変になるのだとしても、個人には選択肢は無かったのです。
しかし、現代に生きる我々も、実はまったく同じ状況に置かれています。
「科学革命」が進む中で、我々は「会社」「貨幣」「教育」などの「虚構」の中で、大した選択肢もないまま毎日の生活を送っているという観点では、実は太古の社会の人類と大差はありません。
現代の我々も、歴史に学ぶべきことは、まだまだ多く残されているのかもしれません。本書はそうしたサピエンスの立ち位置を再認識させてくれる良書です。
変化の速度がどんどん上がっていることからすると、我々に残された学びの時間は減っているのかもしれません。
「サピエンス全史」の日本語版
ユヴァル・ノア・ハラリの他の著作
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