「日本人には無理でしょ」
そんなふうに思っていませんか?
この記事では、本当に英語脳を作れるのかについて、僕の仮説を解説しています。
でも、英語脳なんて作るのは無理だろって、簡単に諦めていませんか?
確かに、大人になってから、聴く・話す・読む・書くの全てを処理できる英語脳を作るのは至難の技ですが、最近のさまざまな研究結果や、脳の機能を考えてみると、大人の日本人でも理論的には可能だよなって思います。
本当にできるかどうか、この記事を読んで考えてみてください!
脳はどうやって言葉を処理しているのか
「読む英語脳」がなぜ作れるのか、まず前提条件となることを説明します!
読む・聴く・話すは別の処理
最初に、脳の中で言葉がどう処理されているのかです。
公益財団法人 日本医療機能評価機構によれば、言葉を処理する脳の中枢は、下の図にある通り3つに分かれています(水色の部分)。
運動性言語中枢 前頭葉にあって、おもに話すことを担う 聴覚性言語中枢 側頭葉にあって、おもに言葉を聴いて理解することを担う 視覚性言語中枢 後頭葉にあって、字や絵を見て理解することを担う 出典:公益財団法人 日本医療機能評価機構 Mindsガイドラインライブラリ https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0081/G0000797/0005 (筆者が表に編集)
人間の脳の働きは全て解明されている訳ではないですが、どうやら読んで理解する(視覚性言語中枢)のと、聴いて理解する(聴覚性言語中枢)のと、話す(運動性言語中枢)のは、脳の違う部分で処理されているということです。
考えてみれば、確かに聴く、話す、読むはやっていることが違いますよね。
これが一つ目のポイントになります。
英会話ができなくても「読む力」だけを鍛えられる
朗報です!
何となく、英語がペラペラの人が英語の本も読んでいるようなイメージがあるかもしれません。でも、そう限定された話ではないということです。
事実、僕もそれほど話す英語は上手いわけではありませんが、洋書読みを続けるうちに英語の本はかなり読めるようになりましたし、英語は話せなくても洋書を楽しんでいる人は大勢います。
もちろん相互に影響しあうので、読んで語彙が増えれば、聴き取れる単語も増えます。
そういう意味では、良い方向への相乗効果は当然ありますが、英会話がダメだと読むのもダメってことはないってことですね。
大人になってからでも大丈夫
これまた朗報です!
ペンシルベニア州立大学の研究によると、新しい言語の学習が、脳を構造的に強化するということが明らかになったということ。
外国語を学習した人達について、学習後に脳神経が物理的に発達していることをMRIでスキャンして確認したそうです。
そして、この効果は年齢には関係ないそうです!
なんとなく、歳をとったら脳はもう発達しないような気もしますが、そんなことはないんですね。
さて、ここまでが読む英語脳を作れる前提条件です。
ちょっと行けそうな気がしてきませんか?
それでは次に、脳が英語を認識する仕掛けを見てみましょう。
視覚性言語中枢が英語を認識するということ
さて、ここで視覚性言語中枢がやっていることを考えてみます。
日本人の視覚性言語中枢は、日本語の文字や文章を見て処理ができるようになっています。これは当たり前ですが、英語を学ぶとどうなるのか?
英語を学んで、アルファベットやそれを組み合わせた単語などを視覚的に認識できるようになると、日本人でも視覚性言語中枢が英文を理解できるようになるということですね。
脳にとっては、日本語のひらがなや漢字であろうと、英語のアルファベットであろうと、実は本質的には違いはないですよね。
その文字の形が記憶されていて、視覚的に認識できれば、そこに意味を見出すことは可能だということ。言い換えれば、視覚性言語中枢は記号に意味を見出しているだけのことですもんね。
だから、英語だと理解するのは無理なんてことはないんです。
何となく無理だって思うのは、自分で限界を決めてしまっているだけで、脳の方には仕組み的にそんな限界はありません。
何か英語圏で育った人にしかできない秘密があるわけではないのです。
ふむ、ということは視覚性言語中枢が鍛えられると、「読む英語脳」に近づきそうですね。
だけどアルファベットを覚えただけでは、英文を速く読んで理解したりはできません。
なぜでしょう?
英語学習を始めた段階では、アルファベットや英単語は解っても、まだ文章を処理することに脳の慣れが足りていないのです。
スポーツでも楽器でも同じことだと思いますが、何でも慣れてくるとスムースにできるようになってきます。
英文を速く読んだり、読解するためには、もう1段階、脳が英文処理に慣れる必要があるんですね。
それでは次に、脳神経が情報を伝達する仕組みと脳が英語に慣れるということを考えてみたいと思います。
脳の神経回路は学習で変化する
理化学研究所 脳神経科学研究センター(理研CBS)の「つながる脳科学」によれば、脳の神経回路には『可塑性』という性質があります。
『可塑性とは、神経活動に応じて神経回路の構造や機能が変化する性質で、この性質によって脳は経験を記憶したり、経験をもとに学習したりすると考えられています。』出典:講談社ブルーバックス『つながる脳科学「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線』(参考:理研CBS 数理モデルでつなげる脳の仕組み vol.1)
https://cbs.riken.jp/jp/public/tsunagaru/toyoizumi/01/
脳神経は経験で学習し、変化する
脳は学習によって、神経回路の構造が柔軟に変化するということですね。
この脳の柔軟さによって、日本人でも英語を処理する情報伝達の回路は作れるってことです。
ここで、もう少し詳しく脳の神経細胞についても見てみましょう。なぜ、脳の神経回路は柔軟に構造を変えられるのか、です。
脳の神経細胞をニューロンと呼びます。
そして、ニューロン同士を接続する部分のことをシナプスと呼びます。
このシナプスを介して、ニューロン間で情報が伝達されます。
このニューロン同士をつないでいるシナプスとシナプスの間には小さな隙間があります。片方のシナプスから、神経伝達物質が放出され、もう片方のシナプスがそれを受け取ることにより、脳神経細胞間で情報が伝達されます。
シナプスの構造が変化し、長期に持続する学習が形成できる
KOMPAS慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトによれば、このシナプスの構造が変化することにより、学習が脳に蓄積されていきます。
『記憶・学習の形成過程では、シナプスでの情報の伝わりやすさ(シナプス伝達効率)が変化します。〜中略〜 より長期に持続する記憶・学習はシナプスの数や形態が変化する構造的な変化がおきるものとされています。』出典:KOMPAS慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/science/201404.html
生物ってものすごく良くできてるなと驚きますが、シナプス同士が直接くっついておらず、シナプスの構造に変化の余地があるから、脳は柔軟に変化して学習できるのですね。
そして、慶應義塾大学病院によれば、シナプスの数や形態が変化する構造的な変化で長期に持続する学習が形成できるとされています。
これって、まさに英語脳が作れるということではないですか!
英文用のシナプス接続を作れ!
日本人の脳には、当然、英語を英語として処理するためのシナプスの接続は最初からは無いです。
しかし、ここまで見てきたように、脳は可塑性という性質があり、柔軟に変化することができます。
脳の仕組みとして、やれば絶対に、英文を処理してくれるシナプスの接続は作れるんです。
昔から言われているように「継続は力なり」だということです!
ただ、この英語を処理するシナプス接続も、あまり使われないと忘れられてしまいます。
この英語を処理するシナプス接続を強化して、簡単には忘れない長期記憶にする必要があります。それにはどうしたらいいのかですが、実は洋書を読むという行為が英語処理用シナプス接続の強化に適していると考えています。
それでは最後に、なぜ洋書読みがシナプス接続を強化することに向いているのかについて見てみたいと思います!
脳神経はまとまりのある情報を選択する
ここでもう一度、理研CBSの「つながる脳科学」に登場してもらいます。
「数理モデルでつなげる脳の仕組み vol.5」で「ニューロンの情報伝達効率の最大化」という話が出てきます。
上で示したニューロン同士の接続は、すごく単純化して1対1の接続になっていますが、実際には人間の脳には約千数百億個の神経細胞があり、お互いに情報をやりとりしているそうです。
実際の脳の中では、ひとつのニューロンに対して1万〜10万個のニューロンが情報を受け渡したりするようです。受け取り側ニューロンではすべての情報を受け取れないので、情報の取捨選択が行われるのではないかという話です。
以下、非常に重要なポイントなので、ちょっと長めですが抜粋しますね。
要約すると、ニューロンが情報を受け渡すときには、同じパターンの神経活動によるまとまりのある情報が選択され、そのパターンを処理するシナプス接続が強化されるということです。
『具体的には、バラバラに発火するニューロン集団からのシナプス強度は弱めて、一番まとまりをもって発火するニューロン集団からのシナプス強度を強化します(図8)。もっとも正確に伝えることができる情報を選りすぐって伝達するよう学習が進んだのです。出典:講談社ブルーバックス『つながる脳科学「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線』(参考:理研CBS 「数理モデルでつなげる脳の仕組み vol.5」 )https://cbs.riken.jp/jp/public/tsunagaru/toyoizumi/05/
洋書読みでまとまった英文処理のパターンを脳に送りこめ!
英語脳が作られていく最後のプロセスは、これだと考えています。
つまり、洋書を多く読むと、結果として、頻出単語やよく使われるイディオムや英文法に沿ったパターンの文を、視覚性言語中枢に数多く送り込むことになります。
それで上の図の「A〜Cのシナプス強度が強まる」と同じことが発生し、英語を英語として処理するシナプス接続が強化されていくのだと思います。
考えてみると、日本語を読むシナプス接続よりも、英語を読むシナプス接続は比較的強化しやすいのではないかと思います。
日本文に比べ、英文は単語ごとに区切られていたり、S+V+OとかS+V+O+Cのように文の構成が明確だったりするので、視覚性言語中枢にとって、日本文よりも全然パターン認識しやすいのではないかと。
だったら会話用英語脳も?
だったらリスニングを繰り返しやれば、会話用英語脳も同じようにできるのではと思うかもしれませんが、そう簡単ではないように思います。
会話用英語脳を作るには、聴覚性言語中枢と運動性言語中枢をそれぞれ鍛える必要があります。聴いて理解するのと話すことは、また別の能力です。
それに加えて、話される英語には、地域差や個人差や話している人数など様々な要素で、無限のバリエーションが生まれてしまうという難しさがあります。
また、話し言葉は文よりもブロークンなこともあり、そういう面でもパターン化が難しいと思います。
対して、英文を読むという行為には、そうしたバリエーションはありません。
基本的には、アルファベットが分かれば、英文は読めます。会話に比べて、読書は脳的には極めて単純なのです。
そして、英文を読む行為は、会話に比べはるかにパターン化が楽で、相対的にシナプス接続が強化しやすい。
これが僕が洋書読みをおすすめする最大の理由です。
まとめ
読む英語脳は作れると思いませんか?
それも洋書読みという比較的現実的なやり方で。
英会話はそれほど上手にできなくても構いません。
洋書読みは、英会話に比べて、遥かに容易かつ効率的に脳にまとまったパターン情報を送り込むことができるからです。
- 言葉を司る脳の仕組みは、聴いて理解する聴覚性言語中枢、読んで理解する視覚性言語中枢、話すための運動性言語中枢の3つがあり、脳の違う部分で処理されている。
- 「読む」と「聴く・話す」は別々に鍛えられる
英会話が得意でなくでも大丈夫。
読む力は、それとは別に鍛えられる。 - 視覚性言語中枢を鍛えることで英語は処理できるようになる
脳(視覚性言語中枢)にとって、本質的には日本語も英語も変わらない。
英語だから無理というのは思い込みに過ぎない! - 大人でも英文用のシナプス接続を作ることはできる
英語学習を継続すれば、長期に持続する記憶・学習として、英文を処理するシナプスの接続ができる。 - 洋書読みでまとまった英文パターン情報を脳に送り込める
洋書読みは、頻出単語やよく使われるイディオムや英文法に沿ったパターンの文を視覚性言語中枢に数多く送り込むことになり、シナプス接続の強度を高めることにつなげやすい。
いかがでしょうか?
英語脳について、僕の仮説をご説明してみました。これは僕のオリジナルの英語脳仮説ですが、自分の感覚とはかなりマッチしています。
そしてこの仮説が正しければ、誰でも読む英語脳を作ることが可能です。必要なのはちょっとだけの根気。
しかも、作るのにそれほど難しいことは不要です。
洋書読みを継続するだけです!
洋書読みを続けていると、ある時、ふと英語を英語のまま理解していることに気付く瞬間が訪れます。
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